カテゴリー: ナ行



愚物語


まだ続くか、化物語。
と思いきや、オフ・シーズンとかで、全く本編には関係ない。
当たり前か。本編はとうに完結仕切っている。

老倉育、神原駿河、斧乃木余接、各々が主人公の三話。

完璧に趣味で書きました、って言うけどそんな事言ったら、趣味で書いて無いのってどれ?って突っ込みいれたくなってしまうが、こりゃ本当に実験的試み100%で書いたんだろうな。

老倉育って、脇役どころか脇の脇の脇でそんな登場人物もいたっけ、と思い出すのに一苦労なようなキャラクターが登場しかたと思うと、なんだか太宰の世界にでも入ったんじゃないの、と思われるような冒頭から始まって、なんだかこれまでとは違う世界が展開されるのかな、と期待持たせてくれたわいいが、何の話なんだこりゃ。

まさか「イジメ」の問題を扱いたかったなんてわけがあろうはずがないし。
それにイジメというほど深刻な問題でもないだろうし。
転校生の周囲で学校しばらく休んだやつがいたぐらいの話ををえんえんとえんえんとえんえんと・・・。
これが西尾維新で無ければ、一話の途中で放り出してしまったことはまず間違いない。

神原駿河の語も、もう終わったはずの忍野扇なんぞが登場したりして・・・これもなぁ。

斧乃木余接と阿良々木月火の話。
これはなかなか楽しい。
月火に振り回される余接が面白い。

月火は不死身人間だったのか。
記憶がリセットされるって、掟上今日子を連想してしまう。

この三つの話には阿良々木暦は登場しない。

これまた、脇を固めたキャラクターののびしろを実験してみた、ということかな。

この実験的試み、全体的には失敗だったんじゃないの?
キャラクターの問題より展開の問題でしょうが、特に老倉育の話なんてひどすぎる。

たぶん、これも次回作が出るんでしょうが、この中で続けて実験してみる価値のあるのは、月火ぐらいかな。

掟上今日子の別バージョンで、「不死鳥 月火の備忘録」なんて。

愚物語 西尾 維新著



海うそ


九州の南の方にある「遅島」という名前の島が舞台。
修験道の島だったその島のあちらこちらを訪ね歩く青年。
そこには廃仏毀釈で無残に破壊された寺の名残りがてんてんと・・・。

廃仏毀釈というもの、歴史の教科書で習ってはいるが、どうにもピンと来ないのは各地に残っている寺院とその歴史。平安時代やら平城京時代の建立の寺院が観光客で賑わっているのを見ると廃仏毀釈なんて本当にあったの?と思ってしまうが、実際に吹き荒れた嵐だったのだろう。

そもそも廃仏毀釈の元は明治政府の発布した「神仏分離令」であって、寺院を破壊せよ、では無かったのだという。
廃仏毀釈というのも熱病のようなものだったのかもしれない。
そもそも神道と仏教の混合こそが日本の信仰のかたちだっただろうから。

そんな廃仏毀釈の名残りを遺した島なんて今もあるのだろうか。
と思って読み進めるうちに、実は戦前の話だったとわかってくる。

話がいきなり50年後になっているからびっくりする。

息子の勤める会社が遅島を観光資源として開発する、というので再訪し、その変容ぶりに驚き、観光資源になるかどうかだけの基準で、思い出深いものがいとも容易く、破壊されるのか残されるのかが決められていくのに虚しさを感じるがやがてその思いも徐々に変わって行く。

それにしても、そんなに思い出深い島を何故50年間も再訪しないまま放っておいたのだろう。

50年の歳月が流れれば、変容して行くのは当たり前と言えば当たり前。
昔、訪れた際に世話になった人もことごとく亡くなっているだろうし、放置すれば誰も訪れない過疎の島になって行くだけだろう。

かつて廃仏毀釈で変容した島は今度は開発によって変容して行く。
時代が変われば、人の居る場所なら風景も変わって行く。
この元青年は「色即是空」という言葉で納得しようとするが、寧ろ「諸行無常」の方が似つかわしいだろうか。

海うそ 梨木香歩著



ミッション建国


日本の少子化問題、将来世代へ先送りの社会保障、東京一極集中による地方・東京の格差。
これらの諸問題をなんとかしようと立ち上がったのが若手の国会議員達。

誰がどう見ても小泉進次郎だろうと思われる主人公が誰がどう見ても中曽根康弘だろうと思われる人物に教えを乞うたりする。

案として出て来るのが、老朽化して過疎化して来たかつての子育てのメッカである公営団地や東京オリンピックが終わった後の選手村を若い世代に新たな住まいとして提供し、その中で教育も充実させ・・・云々。
また、早めにの結婚・出産を促進し子育てを終えた女性に再教育の後、第二新卒として社会で活躍してもらうなどなど。

現実界では、まさに第2次安倍内閣が発足し、女性の社会進出。地方の活性化を政策の目玉に引っさげた。

東京の一極集中を回避する特効薬ならこちらにもアイデアはある。

まさにこれからやろうとする法人税減税がそれだろう。

ただし、これを東京だけは減税じゃなく50%まで増税とし、東京以外の首都圏は現状維持。
その他の地方に関しては半分以下の大幅な減税。

かつては各地に本社があったはずが、どんどん本社機能を東京へ集中させているのが、現状。

それを元に戻すにはこれっきゃないじゃないのだろうか。

ものすごい名案だと思うんだけどなぁ。

維新の橋下さんあたり、言い出さないかなぁ。

とまぁ、この本、ミッション建国の内容からは大幅にはずれてしまったが、小泉進次郎が都知事にでもなったらますます東京に集中してしまいそうなので、敢えて話題をそらせてみました。