カテゴリー: ナ行



悲痛伝


悲鳴伝の続き。

悲鳴伝そのものは一冊で一応完結しているので、続きがあるのかは微妙なところだと思っていたが、やっぱり地球からのメッセージを受け取ったままでは尻切れトンボだし、続いたか。

でもこの続き方はちょっと違うぞ!

四国全土の人が全員失踪!

またまた極端な!前回は地球に住む人類の1/3が突然死んでしまうという大いなる悲鳴からのスタート。
全地球の1/3などという規模から言えば四国四県は小さなものかもしれないが、日本人にとってとてつもないどでかい規模だ。

その四国に住む人とは誰とも連絡が取れない。人が生きているのかさえわからない。

で、単身四国へ乗り込む指令を受けた空々空。

上陸した香川県で、なんと!あろうことか魔法少女と遭遇する。

彼女は四国で生き残っているうちの一人で、どうやら生き残るためにはルールが有り、そのルールとは「やってはいけないこと」つまり「それをやったら死ぬ」ということをしないで回避すること、のようなのだ。

どこに地雷があるのか、地表からは全くわからない地域を地雷探知機も地雷探知犬も何もない手探りで地雷回避しながら歩け、というようなルール。

止むにやまれぬ事情があったにせよ、魔法少女のコスチュームをはぎ取って、着ている姿を別の魔法少女に見つかって変態扱いされ、亡くなった魔法少女の下着の中をまさぐっている最中を別の魔法少女に見つかって、さらに超弩級の変態扱いをされて・・というような展開。

この「悲痛伝」、結構評判悪いですね。
これだけページを費やしておいて、全然進展しない。冗長だ・・・。

確かに四国へ上陸してほとんど進展していないけれど西尾維新には往々にしてあること。まだ楽しめるだけいいじゃないか、となどと思うのですが。。。。

ただ、本来の対地球の話からはかなりはずれて来ているようには見えますねぇ。

悲痛伝  西尾維新著



暦物語


この本はちょっといただけない。

西尾維新にしてはありえないぐらいにひどすぎる。

西尾維新の本の中でもこれまで何度もチンタラ展開しているなぁ、とか、なかなか進展しないなぁ、この話、とか、極端なものではこの前半部分全部無くてもストーリーとして成り立つよね、みたいなことは往々にしてあったが、そりゃ読んでいる方にすれば、次の展開、次の展開、とうながしたくもなるのだが、じらしてじらして、またそのじらしのどうでもいいところが結構面白かったりして、まぁなんだかんだと言いながらも楽しませてもらっているのでOKなのだろう。

ここ一年を振り返ったから暦物語なのか、阿良々木暦だから暦物語なのか、おそらく両方の意味なのだろうが、あの春からの出来事ならめぼしいところはすべからく本編に書かれているはず。
今さらそのおさらいをしても仕方がないし・・。

だから、ささいな小さな小さな話小さな話を4月5月と月に一つずつ十二ほど。

小さくまとまった話。他の小編小作家なら、まぁまぁの評価をもらうのかもしれないが、こんなつまらない話を西尾維新に期待している人はいないだろう。

本人が積極的に書いているとは思いづらい。

悲鳴伝の続きの悲痛伝、悲惨伝で四国にのめり込んで四国参りをしている作者に、なんとか最終版までのつなぎを!と編集者が無理矢理に書かせたような光景が目に浮かんでくる。

もし、そうだとしたら、編集者も余計なことをしたものだ。

こんなものを世に出すぐらいなら、読者をひたすら待たせておいた方がはるかにいい。

暦物語 西尾 維新 著



のろのろ歩け


急激な発展を遂げる中国という国。

主人公は10年前に訪れたことがあり、今回は初の中国の女性ファッション誌を創刊のための助っ人として北京に招へいされる。

そこで彼女が見たものは、感じたものはあまりの10年前との違い。

日本の高度成長期や日本のバブル期と重ねるが、もはや成長度合いはそんなものではないだろう。

主人公氏の印象にあるような人民服はさすがに10年前でも無かったかもしれないが、もう少し前ならあっただろう。

一昔前の中国の映像と言えば人民服と自転車の洪水。

今やどうだ。

至る所の高層ビル群。

中国という国に対して、嫌悪感や薄気味悪さを感じる人が結構いるが、これは何も尖閣の問題ばかりが原因ではないだろう。
共産党一党独裁で民主主義の国ではない、これも原因とは言い難い。
他の王政の国にそれほどまでの嫌悪感を持つだろうか。

日本の戦後から高度成長、バブルという他の国が50年かかって為し得たような大成長をたったの五分の一ほどの短期間で成し遂げてしまう、そんな急成長ぶり、急拡大ぶりなんともが不気味でならない。ということなのではないだろうか。

あまりにそのスピードが凄まじいのだ。

当然、いびつなところが残るに決っている。
今年の正月明けのニュースでは、北京は晴れの日でも薄暗いほどに空気が汚れ、人々はなるべく外出を控えるようにしている、とか。

タイトルにある「のろのろ歩け」は「慢慢走」(マンマンゾウ)という言葉から来ている。
意味するところは「Take Care!」「さよなら」の代わりに「気を付けてね!」とか「お元気で!」という言葉を使うような意味合いで使われるらしいのだが、「慢慢走」ということば、「ゆっくり行けよ」と言う言葉が挨拶に使われるというところがおもしろい。

あまりの急ピッチで進んで行く社会に対して、人々の本音は「ゆっくり行けよ」と言っているかのごとくではないのだろうか。

他に上海を舞台とした話、一話。

台湾を舞台にした話、一話。

のろのろ歩け 中島京子著