月別アーカイブ: 6月 2006



不撓不屈(ふとうふくつ)


なんと言っても実名なのである。
出て来る、出て来る。渡辺美智雄、津島雄二、小渕恵三、小泉純一郎、旧社会党の平岡忠治郎、勝間田清一、旧民社党の春日一幸、国税庁直税部長時代の鳩山威一郎・・・
こういう実名を目にすると、この「不撓不屈」という本、飯塚毅という税理士や税理士事務所、実物をモデルにした小説でも何でも無く、実話でなければならない。
これが実話だとしたら、居たのであろう。一介の税理士の立場でありながら、国家権力そのものと言っても良いキャリアバリバリの大蔵官僚を敵に廻して、戦った人が。

税は1円も余分に払うべからず、また1円の払いの漏れも有ってはならない。
完璧主義者であり、自身の仕事について100%の自信が無ければそんな事は出来ないだろう。
とは言うものの企業にしてみれば、そんな事よりも実務優先で、税務官僚を相手に真っ向から、などと言う気はさらさらなく、なるべく穏便に素早く片づけてしまいたい、というのが本音ではないだろうか。
企業たるもの最終的には何らかの社会貢献をする事を目的としているであろうから、税金を少々余分に払ったところでそれは許せる様な気がする。
許せないのはやはり年金制度だろう。そもそも年をとってから還元して欲しい人の為にある制度であれば、強制加入では無く任意加入という姿が好ましい。
これまで集めて来た年金運用資金を勝手に使い切ってしまった上で、若い世代が年金に加入しないなら財源が無いなどと言うのは運用して来た側の責任であって、若い世代の責任では無い。いっその事税金に一本化してしまったら良いでは無いか・・などと考える今日この頃である。

不撓不屈、この男ただ者では無い・・確かにそうだろう。
国家権力と真っ向から対峙する税理士。
この飯塚毅という人が非常に清く、正しく、凄まじい人である事は言うまでも無いが、
何故、税理士なんだろう・・とやはり思ってしまう。

貧しい布団屋の倅として生まれ、本来であれば布団屋を継ぐところだったのが、あまりに成績優秀にして、先生をしてその専門分野で打ちのめしてしまうほどに優秀な人が選ぶ道が何故、税理士だったのか、結局税理士という立場であったからこそ、この人が如何に優秀で理路整然と正しい事を行ったとしても、自分より年下の政治家である渡辺美智雄などに頭を下げ、政治家の力で助けられたのでは無いか。

ちなみにこの本を取り上げてみようと思ったのは、この本が映画化される話を聞いたからであるが、実はもう昨年に映画化されたのだという。

別段賞与という名の賞与引当金が争点である。さぞかし一般受けしない映画だったのではないだろうか。

上記は誤りでした。昨年に映画化は誤りでこの6/17に封切りだそうです。観に行かなければ・・。
ps.この文章かなり税理士や税金、税務署について突っ込んだ事を当初書いていたのですが、あまりに不穏当、という事で半分以下に割愛されてしまいました。

不撓不屈(ふとうふくつ) 高杉良著



DEATH NOTE


とうとうコミック本まで手を広げてしまいました。
そもそも死神の持ち物であるべきDEATH NOTEを主人公の夜神月(ライト)が入手する事から全ては始まる。 夜神月は自らをキラと名乗り世界中の犯罪者を粛清し、「犯罪者のいない理想の世界」を創る事を考える。

このキラ対その存在を暴こうとする、エル、その後継者であるニア、メロとの心理合戦がやけに面白い訳なのだが、その面白さに拍車をかけているのが、このノートの持つルール。

大まかな箇所のみをピックアップすると、
①この「デスノート」と呼ばれるノートはそのそも死神の持ち物である。
②人間の顔を思い浮かべその名前を書くと、その人間は40秒後に心臓麻痺での死亡する。
③名前を書いてから40秒以内に死因を書けばそのとおりになる。
④いかなる方法を用いてもノートに名前を書かれた人物の死を取り消すことは出来ない。
⑤死因を書いてから6分40秒以内に死に至るまでの詳細を書くと、その人間の死まで物理的に可能な範囲で操ることができる。
⑥ノートを所有している限りそのノートの元々の所有者であった死神が人間に憑く。
⑦所有権を失うとノートに関する記憶は全て失われる。
⑧死神はデスノートを最低1冊は必ず所有していなければならない。
⑨人間をデスノートで殺すと、デスノートで殺されずに死ぬはずの寿命との差分を自分の寿命としていただくことが出来る。
⑩デスノートの所有権を持つ人間は、自分についている死神に自分の残りの寿命の半分と引き換えに、死神の目を手に入れることができる。
死神が持っている目で、人間の顔を見るとその人間の名前と寿命がわかる。・・・

ノートに関するルール、所有権に関するルール、このルールを巧みに利用して夜神月は、捜査する対象を欺こうとする。その一つ一つのトリックはなかなか良く考えられていて面白い。
逆に数々の迷宮入り事件を解決してきたという謎の人物「エル」は、その夜神月が99%キラであると確信しながらもその決定的な証拠を掴めない。この両者の卓越した頭脳バトルが人気の所以なのだろうか。

だが・・・だが、なのだ。
このキラは犯罪者を日々何人も何人もノートに名前を記す事で「心臓麻痺」にて死亡させている。世の中を良くするために。
従って、事故によるものや過失によるものは当然除外される。
この世の中、そんなに殺さなければならないほどの凶悪犯罪者があまた居るであろうか。確かに凶悪犯罪は多いし、増えているのかもしれない。
だが、遺族にしてみればどうだろうか。名前がはっきりしていて、凶悪な事件を起こした事が確実な犯罪者があっさりと「心臓麻痺」なんぞで簡単に死んでくれる事を望むであろうか。裁判にてうなだれて反省した姿を見せ、社会的に償いを行う方を望むのではないだろうか。
一方、名前の出ない方はどうだろうか。少年犯罪についてはかなり凶悪な事件を犯した犯罪者であっても未成年という事で、マスメディアに名前が載る事は無い。
そして、遺族にも誰も知らない間に再び世に出ている、という現実がある。
かなり古い事件だが、東京都足立区で女子高生監禁、顔面ボコボコの上、コンクリート詰めにした、という事件があったが、この犯人達は全員未成年という事で名前も出る事の無いまま、反省の念があったのかどうかさえ判らないままにいつのい間にか、もう外の世界をうろついているのである。
未成年であれ、精神を病んだ人であれ、殺人という行為に対する報いはやはり死刑という刑で償うのが妥当であろう。おそらく作者はその事を訴えたいのではないかとも思うのだが、実際に未成年者、精神を病んだ人、についてはマスメディア上に名前が登場しない。夜神月が警察官の息子でその名前を知る立場に有ったとしても、彼らを「心臓麻痺」で葬ったところで、肝心の世の中がその名前すら知らないのであるから、犯罪者を罰して世を正す、にはやはり当らないのである。

皆さんも考えてみたらいい。即「心臓麻痺」にして40秒で楽にしてあげるのが望ましい犯罪者って居りますか?

オウムの麻原?和歌山の毒入りカレーのおばさん?はたまた、つい最近の秋田の事件?近所の小学校1年生を葬った33歳のオバサン?
いくら数えて見たところで、3日も持ちませんよ。きっと。

この DEATH NOTE が主演 藤原竜也 で映画化。この6月17日より封切り開始だそうです。映画では死神ってどう描かれているんでしょうね。

DEATH NOTE (1) 原作:大場つぐみ