読み物あれこれ(読み物エッセイです) ブログ



屍人荘の殺人


このタイトルなんともなぁ。
本屋で手に取って買いたい気持ちになかなかならないと思いますよ。

このタイトルの本にしてはかなり軽快なピッチであっという間に読み進めてしまった。

山のペンションへ夏合宿で泊りに行く大学の映画研究部のサークル。
そこへなんとか潜り込もうとする探偵ごっこの大学非公認サークルの二人。
一人の美形女子のあっせんでなんとか同行に成功する。そしてそのあっせんしてくれた彼女もまた探偵だった。
しかもかなり本格的な。

そのペンション近くで開催されていたロックフェスでのウィルステロ。
感染した人間はなんとゾンビになる。
まさにバイオハザードそのものだ。

こっちのゾンビはバイオハザードのゾンビみたいなスピード感がなく、ごくゆっくりとしか動けない。

こちらのゾンビの方が論理的なのかもしれない。

心臓は止まっているのだろうし、血液も循環していない。
感染していない生物の方角にだけ動こうとする本能だけで動いている。
素早く動く筋力などあるわけがない。

なかなかゾンビについての雑学を教えてくれたりする。
こお地球上にはゾンビ化するアリが存在するらしい。
ならば人体で起こす事も実験しだいでは可能だったりして。

そのゾンビに囲まれたペンションの中で起きる殺人事件。

どう見てもゾンビに食いちぎられたとしか思えない死体なのだが、ペンションの守りは固くバリケードを築いて、ゾンビの侵入を阻んでいるはず。

そしてどう見ても内部の人間が犯人としか思えないメッセージの紙片。

探偵ごっこの方の探偵さんもそうそうにゾンビに喰われてしまうし、なかなか展開が面白い。

惜しむらくはやはりタイトルだろうか。

屍人荘の殺人  今村昌弘著



元年春之祭


中国の古代の話、宮城谷氏以外の書き手のモノを読むとこんなにも読みづらいのか。
いやいや宮城谷氏以外も読んでました。

なんだろう。
何故、頭に入って来ない?

前漢の時代の旧楚の国の祭祀を担う一族の元へ、旧斉の国から豪族の娘が客人として訪れ、そこで起こった殺人事件を解決して行こうというお話。

その4年前に起きた一族の長男一家殺人事件。
娘一人を除いて全員死亡。

それに新たに起きる殺人事件。

一帯の集落には一族の3家族しかいないのだから、
それぞれ、外部と遮断されているなら、ほぼほぼその親族内でしか考えられないし、第三者が捜査をしようどころか近隣に住む一族同士。
そんなの毎日一緒に過ごしていれば自然にわかってしまうんじゃないのか。

たまたま滞在しに来た縁もゆかりもないしかも若い娘二人が新たな犯行の犯人なんてちょっと無理があり過ぎる。

なかなか絶賛されていた本だけに期待するところ大だったが。

中国古代を舞台とした現代的?ミステリ、という目新しさはあったものの、なんとも読みづらい本だった。

やっぱり宮城谷氏の本を読みたくなってしまった。

元年春之祭 陸秋槎著



フーガはユーガ


子どもへの父親の虐待、母親は見て見ぬふり。
しょっちゅう出てくる話で、今年も何度かニュースのTOPを飾る。

ニュースのTOPを飾るのはその子供が亡くなってからの事で、人知れず行われている虐待などは山ほどあるのだろう。

これまでの伊坂氏の作品にも何人もの悪人が登場するが、結構愛嬌があったり、憎めない性格だったりするのだが、今回の悪人たちは到底そんな可愛らしい連中には遠く及ばない。

この物語、優我と風雅という双子が主人公。
この二人も父親の虐待と母親の無視をずっと体験してきている。

彼らはある日、突然に互いが瞬間移動で居る場所が入れ替ることに気が付く。

彼らの戸籍上ではない本当の誕生日に2時間置きに。

それをなんとか有効活用できないか、とずっと小さい頃から考え続けるのだ。

片方が変身後のヒーローの格好をして、丁度その時間にもう片方が「変身!トリャー!」とやればどうなるか。
なんか、そういう発想するだけでわくわくするなぁ。

彼らは父親の虐待を日常的に受けていたわけなのだが、もっとひどい目にあっている人も居て、親が死に引き取られた親戚の家で、まるでペットの様に飼いならされている少女。ペットならまだ可愛がるだろうが、その逆で家の中の巨大水槽ので溺れて苦しむのをそういう趣味を持った人間を集めてショーを開催するといういかれっぷり。

かと思えば子供を動けなくなるようにした後に車で前から轢き、バックしては轢き、という残忍なやり方で死なせる人間。

人間じゃねぇ、という連中がわんさか出て来る。

そんな読み物、本来ならかなりずっしりと重たい、暗い気分になってしまうところ、そこを悲壮感を漂わせずに一気に読ませてしまうところが伊坂氏ならではだ。

フーガはユーガ、ちょっと異色の伊坂小説ではあるが、やっぱり映画化されるんだろうな。
案外、ゴールデンスランバー並みの名作になる様な気がする。

って、単に自分が見てみたいだけか。

フーガはユーガ -TWINS TELEPORT TALE- 伊坂 幸太郎著