月別アーカイブ: 10月 2014



風の向こうへ駆け抜けろ


競馬のジョッキーという、これまであまり取り上げられることの無かった世界を舞台にした話。

主人公は芦原瑞穂という18歳の女性騎手。

中学を卒業すると全寮制の競馬騎手の養成学校に入り、男子生徒よりも優秀な成績を残して卒業。
卒業と同時に各騎手候補には就職先となる地方競馬の厩舎があてがわれる。

瑞穂にあてがわれたのは中国地方にある鈴田競馬場。
そこの中でも競馬馬の藻屑の漂流先と言われるような最も弱小の厩舎。

今や巷では「女性が輝く社会」というのが合言葉となった感があるが、競馬のジョッキーという男ばかりの世界に女性騎手が入って行くと皆はどんな目で見るのか。

「人気取り」どれだけ実力で勝負しようと思っていてもそういう目で見られる。
厩舎の職員は別にしても地方都市の市の職員などは広告塔としての役割りとしか考えていない。

競馬の専門用語も多々出てくるし、地方競馬のやりくりや人間関係なども、実際に経験した人で無ければ書けないのではないかと思える箇所がいくつもある。
かなり中まで入りこんで取材したのだろうか。

廃業寸前になっていく厩舎が起死回生。中央から捨てられたあばれ馬を調教し、彼女と共に中央の大レースへと乗り込んで行く。

なかなかに感動させられる一冊だ。

風の向こうへ駆け抜けろ 古内 一絵 著



愛妻納税墓参り


最近の新入社員はそろって空気が読める人間ばかりだと誰かが嘆いていた。

KYという言葉が一時流行ったっけ。

空気が読めないやつは嫌われるんじゃなかったのか?

怪訝な思いで聞いていると、廻りの空気ばかりを気にして自分の考えを持っていないんじゃないか。本音は何を考えているのか、さっぱりわからない、というのがその嘆きの主旨だった。

何を考えているのかわからないなら新人ばかりじゃあるまいに。

年配の連中だって本音のわかるやつなんて、そうそういないんじゃないのか。
まわりの空気ばかりを気にし過ぎて、上役のご機嫌伺いばかりしているやつなんで山ほどいるだろう。

三宅久之さんは周囲の意見に流されることなく、本当にぶれない人だった。

周囲全員が消費税増税反対!と言う中で、一人、老いも若きも金を使った連中から税を調達する、一番公平じゃないか!
年寄りだけがもらうばっかりじゃ、若い連中に不公平だ、と自論を曲げなかった。
三宅さんが一言発すると、廻りの反対連中もしーんとなる。

三宅さんは頑固一徹の空気が読めない人なんかではなく、空気さえも作ってしまう人だった。

「愛妻納税墓参り」この言葉、三宅さんの口から発せられるのを何度も聞いた覚えがある。

戦前、戦中、戦後の話などは生き字引のように語られる、三宅さんの言葉にはいつも説得力があった。

その三宅久之さんの回想録を三男の三宅眞さんがまとめているのがこの本だ。

一昨年の春ごろだったか、テレビ出演やら講演会やらの政治評論家活動の引退を宣言される。
それでも人生の幕を下ろす前にこれだけは、と思われたことが「安倍晋三をもう一度日本の総理大臣にすること」だった。
まだ本人すらその時期では無い、と思っていた時に本人を説得し、周囲にその空気を作り上げて行く。
三宅久之さん無くして今日の安倍内閣は誕生していない。

かーっと怒ったじかと思うと、次の瞬間にはもう愛くるしい(などと言えばおこがましいが)笑顔でニコニコしていらっしゃるあの笑顔。

回想シーン以外であの笑顔を拝むことはもう無くなった。

残念でならない。



ミッション建国


日本の少子化問題、将来世代へ先送りの社会保障、東京一極集中による地方・東京の格差。
これらの諸問題をなんとかしようと立ち上がったのが若手の国会議員達。

誰がどう見ても小泉進次郎だろうと思われる主人公が誰がどう見ても中曽根康弘だろうと思われる人物に教えを乞うたりする。

案として出て来るのが、老朽化して過疎化して来たかつての子育てのメッカである公営団地や東京オリンピックが終わった後の選手村を若い世代に新たな住まいとして提供し、その中で教育も充実させ・・・云々。
また、早めにの結婚・出産を促進し子育てを終えた女性に再教育の後、第二新卒として社会で活躍してもらうなどなど。

現実界では、まさに第2次安倍内閣が発足し、女性の社会進出。地方の活性化を政策の目玉に引っさげた。

東京の一極集中を回避する特効薬ならこちらにもアイデアはある。

まさにこれからやろうとする法人税減税がそれだろう。

ただし、これを東京だけは減税じゃなく50%まで増税とし、東京以外の首都圏は現状維持。
その他の地方に関しては半分以下の大幅な減税。

かつては各地に本社があったはずが、どんどん本社機能を東京へ集中させているのが、現状。

それを元に戻すにはこれっきゃないじゃないのだろうか。

ものすごい名案だと思うんだけどなぁ。

維新の橋下さんあたり、言い出さないかなぁ。

とまぁ、この本、ミッション建国の内容からは大幅にはずれてしまったが、小泉進次郎が都知事にでもなったらますます東京に集中してしまいそうなので、敢えて話題をそらせてみました。