月別アーカイブ: 11月 2014



仏果を得ず


三浦しおんさんという作家、ほんとにはずれが無い。
「神去なあなあ日常」にしろ「舟を編む」にしろ方や山村の林業、そこで行われる壮大な祭りの風景、方や辞書を編纂するというなんとも地味な世界、それをあれだけ読ませる話に仕上げてしまう。
しかし、今回だけは読み始めてどうなんろう、と思ってしまった。
文楽の世界。
全く興味をそそられる世界では無い。

そんなところにまで手を出しちゃったの?と

さすがにこの世界だけは、途中で眠たくなるんだろう、とばかり思っていたが、そうでは無かった。

文楽の世界は、物語を語る太夫とその太夫とコンビを組む三味線、そして人形遣い。
この三者で成り立っているのだが、これまではほとんど人形遣いの世界だと思っていた。
この話の中で、人形遣いの出番は少なく、ほとんど太夫と相方の三味線弾きが主要な登場人物だ。

主人公は高校の修学旅行でたまたま文楽に連れて行かれ、眠るつもりが太夫のあまりのエネルギーの凄さに圧倒され、卒業と同時に文楽の世界に身を置く、キャリア10年の健という若者。彼の役割りは太夫。

師匠の命令でとっつきの悪い先輩で「特定の太夫とは組まない」を信条としている兎一郎と無理矢理コンビを組まされる。

何と言っても師匠の命令は絶対なのだ。
とにかくこの健という青年、稽古熱心で文楽のことしか頭に無い。

そこまでその人物になりきらなければならないのか。
というほどに、その文楽の登場人物の心の在りかを探そうとする。
焦る健に三味線の兎一郎は
「長生きすりゃ出来るようになる」
みたいな事を言う。

兎一郎が言う長生きとはあと六十年長生きしたところでたったのあと六十年。
三百年以上にわたって先人たちが蓄積した芸の道をたったの六十年で極まることが出来るのか?
ということ。

仮名手本忠臣蔵の勘平と言えば、仇討ちの血判状に名を連ねながらも結局参加しなかった、出来なかった不忠者。

その勘平の心境を語ろうと悶々とする健が行きつくのが、
「死なぬ死なぬ」と叫ぶ勘平の叫び。

やっぱり、しおんさんははずさない人だなぁ。

今度、文楽というものを是が非でも観てみよう。

途中で眠ってしまわないかどうかは半信半疑ではありますが・・・。

仏果を得ず 三浦しおん 著



中国崩壊前夜


北朝鮮の中国とのパイプ役だった張成沢(チャン・ソンテク)氏が公開処刑されて以来、北と中国の間は冷え切っていると言われている。

著者は大きな間違いだと言い切る。
張成沢氏を切ったのは瀋陽軍区とのパイプを切ったのであって、中国の中央の意思を尊重したもので、寧ろ中央とはもっと密接になったのだ、と。
だから北にはまだちゃんと中国からの石油がパイプラインで送られているのだと。

ソ連の崩壊を予想し、その前にソ連が東ドイツを見限る事を言い当てていた長谷川氏は、今の中国と北の関係をそれに似ていると見ている。

中央と北は近くなったが、もういつまでも北の面倒を中国は見続けていられないのだ、と。

中国中央が見限ったら、北はまもなく崩壊する。
金正恩はスイスあたりへ亡命するだろう、とまで言い切っている。

その長谷川氏の予想のせいではあるまいが、とんと金正恩氏は表舞台に出て来ていない。
それより何より、中国そのものの危機。
もうそんなに遠くない未来だという。

中国の中央の崩壊、その後は、一体どんな姿になるのだろう。

長谷川氏は七つの軍区がそれぞれに小競り合いをしながらの状態がしばらく続くのではないか、と見ている。

香港のデモ、かなり長期化しつつある。

このデモが何かのトリガーを引くことになるのかもしれない。